読書感想文の思い出

小学校の夏休みに宿題はつきものだったが、中でも読書感想文は特別な宿題であった。図画工作や自由研究はそれなりの課題を見つけて、無事に済ませていた。だが読書感想文だけは毎年、何の作品について書こうか、どのように書いたらよいか必ずと言っていいほど悩んでいた。小学校に入った年から毎年、おそらく中学を卒業するまでの間は毎年、毎年読書感想文を書いていた。

最初は絵本に近い児童書。今でもどんな本の感想を書いたか、半分くらいは思い出せるだろうか。徐々に文字数も多く、内容も年相応のものに変化していったものの、感想文という本質は変わることはなかった。時には親に手伝ってもらったり、あるいは教師にアドバイスをもらったりと、あれこれ苦心していた。かならず数ある宿題の一番最後まで残る、まるで紅白歌合戦における大トリのような存在。何とか書き終えた時にはこれで夏休みの宿題が終わったと、毎年安堵していたことを思い出す。

あれから長い長い月日が流れた。本は時々、小説を中心に読んではいたが、読書感想文とは無縁の日々が続いている。どのくらい私は小説を読み、感情を揺さぶられては消えていったのだろう。今となっては一部の作品を除き、大まかなあらすじ程度にしか覚えていないもの、それすら忘れてしまったものがほとんどである。図書館で数年前に借りた本を気づかぬうちにまた借りていたこともあった。どれだけ私の中で記憶に残り、生きていく上での糧になっているのだろう。

このサイトを作るにあたって、文章を書くということは簡単なようで難しいことをあらためて思い知らせれた。私に何が書けるのか、どうやったら書き続けられるのか。小説家のようにとは言わないが、せめて人並みに文章を書くことが出来ればと思っている。あれこれ思索しているうちに、かつて毎年の難題であった、読書感想文を思い出した。あの頃書くことは苦痛であったかもしれないが、今は何の縛りもない。もっと自由に、思いのままに書くことが出来る。年齢を重ねた今だからこそ、出来ることもあるだろう。

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