ショートショートの世界
只今、星新一のショートショート集を読んでいる。ショートショートとは、1920年代にアメリカで誕生した、超短編小説(所説あるが、概ね4000千字くらいまでの作品)である。話の内容は多岐にわたるが、主にSF・ミステリー・コメディなど。とはいうものの、定義はとくに決まっておらず、短い作品なら何でも良いようだ。この分野を日本で広めたといわれるのが、星新一という作家。生涯にわたり、1001編以上の作品を生み出したそうだ。私は中1の頃、国語の授業に集中できないときは、よく便覧を読んでいた(そのせいで近代~現代の作家の名前と作品名だけは詳しくなった)。その中に星新一の記載もあり、名前とショートショートの作品『ボッコちゃん』の存在を知った。知ってはいたものの、読む機会なく長い長い時間が経過してしまった。最近になって、どういうわけか一度読んでみようと思い、今日この頃に至っている。

現在読んでいるのはもちろん、代表作がタイトルの『ボッコちゃん』である。この本には300ページ余りの本に50編以上の話が収められている。数ページもあれば1話終わってしまうので、あまり本を読まない人でも簡単に読むことが出来る。内容的にはSF作家でもあった氏らしく、ロボットや宇宙人が出てくる話が比較的多いように感じた。タイトルにもなっている『ボッコちゃん』であるが、バーのマスターが作った美人のロボットの名前である。見た目は人間そっくりだが、オウム返しに近い、簡単な受け答えしかできないという欠点をもっている。が、ロボットであることを知らない客たちは、そのそっけない言い方を魅力と感じて人気が出、店は繁盛する。中でもボッコちゃんに熱をあげる若者がいて…という話の展開である。どんなオチなのだろう、と思っていたが、意外な終わり方でインパクトがあった。わずか5ページの作品にこんな展開が待っていたとは。ショートショート恐るべし。

ほかにも、特別なペットを飼うある男の話や、よその星に親善大使として訪れる一行の話など、内容は多岐にわたる。話のオチも悲しい話から苦笑いしてしまうものまで(ブラックなものが多め)、様々な結末が楽しめる。たった10分もあれば、話の最初から終わりまで読めてしまう、ジェットコースターのような展開に、長編小説とはまた違う魅力を感じている。