馬の足音

休日。近くの神社のお祭りがあった。お神輿や稚児行列などが町中を一周する、歴史ある祭りである。が、私は近所でなかったり、他所へ出かけたりと、今までまともに見たことがなかった。今回たまたま予定もなく、お祭りの日も知っていたため、一度見てみようかとその気になった。

午前11時。町中の通りではすでに行列が進んでいた。先頭に袴をはいた人。十数人で担ぐお神輿と、交代の担ぎ手たち。その後に子供たちの稚児行列。そして、後方に6頭ほどの馬が人を乗せて歩いていた。

馬たちの先頭を行くのは、ひと際体の大きな、足の太い馬。オレンジ色の鞍をつけられ、パカパカとおとなしく歩いている。その音が規則的でとても心地良いと感じるのに、さほど時間はかからなかった。パッカパッカパッカ…私は、見た目もそっちのけですっかり馬の歩く音に魅入られてしまったのだ。幸い馬は6頭もいたので、しばらくの間パカパカ音を聞き続けることができた。今まで馬の歩く音など、それ程気にしていなかったのだが、今回はなぜかその音に聞き入ってしまった。…なぜだろう?

家に帰ってから調べてみた。まずは馬の蹄鉄について。デリケートな蹄を守るために蹄鉄がつけられており、蹄に合わせてあの形になっているようだ。蹄底はお椀をひっくり返したようにへこみがある。そのため、平らで固いところを歩くときにパカパカという音がでるとのこと。そして、『馬の歩く音』『馬の走る音』は効果音としても取り上げられており、ダウンロード素材としても多数存在している。あの一定のリズムに魅了された人が意外にも多いようだ。

ほとんどの人は普段馬を見る機会など限られていると思う。今回近くで馬を見ることによって、思いもしなかった新しい気づきを得ることが出来た。人間、いつ、どこで、なにに興味を引くかなんてわからないものだ。今日はこの後、投稿されている動画を見て、もう一度あのパカパカ音を堪能しようと思っている。

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